札幌の広告・マーケ企業がクリエイティブ人材を確保する方法——「東京に取られる」前にできること
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札幌の広告・マーケ企業がクリエイティブ人材を確保する方法——「東京に取られる」前にできること

#採用#評価#組織開発#キャリア#制度設計

札幌の広告・マーケ企業がクリエイティブ人材を確保する方法——「東京に取られる」前にできること

「うちにいた優秀なデザイナー、東京の会社にリモートで引き抜かれました。給与で2倍出されたら、もうかないません」

札幌の広告代理店の社長が、肩を落として話してくれました。この悩みは、札幌の広告・マーケティング業界で繰り返し聞く声です。デザイナー、コピーライター、Webディレクター、動画クリエイター——クリエイティブ人材の獲得競争は、リモートワークの普及によって「札幌対東京」の構図から「札幌対全国」の構図に変わりました。

しかし、私はこれまで500社以上の企業の人事を支援してきた中で、札幌の広告・マーケ企業が「東京に勝てない」とは思っていません。むしろ、札幌だからこそできるクリエイティブ人材の確保戦略があると考えています。報酬だけの勝負ではなく、「この街でこの会社で働く意味」を明確に打ち出すことが、鍵になります。


札幌のクリエイティブ業界が抱える人材課題

課題1:東京との報酬格差

札幌のクリエイティブ職の報酬水準は、東京と比較して2〜3割低いのが実情です。それ自体は以前からの課題でしたが、リモートワークの普及で状況が変わりました。東京の企業が「東京の報酬水準で、札幌在住のまま働けます」と提案してくる。札幌の企業にとって、これは大きな脅威です。

課題2:クリエイティブ人材のパイが小さい

札幌のクリエイティブ人材の市場規模は、東京と比べて圧倒的に小さい。美術大学やデザイン専門学校の卒業生数も限られます。小さなパイを複数の企業で取り合う構図です。

課題3:「成長機会」への不安

クリエイティブ人材にとって、「この環境で成長できるか」は報酬以上に重要な判断基準です。東京にはナショナルクライアントの大型案件、最新トレンドの発信源、同業のクリエイターとの交流機会がある。「札幌にいたらスキルが停滞するのでは」という不安が、人材流出の一因になっています。

課題4:マネジメント人材の不足

クリエイティブ部門のマネジメントができる人材が圧倒的に不足しています。プレイヤーとしては優秀だが、チームのマネジメント、プロジェクトの全体設計、クライアントとの折衝ができる人材が足りない。結果として、トップクリエイターが疲弊し、組織全体のクオリティが個人に依存する構造になっています。


「東京に取られない」ための人材戦略——5つの柱

報酬で東京と正面から張り合うのは現実的ではありません。異なる軸で勝負する戦略が必要です。

柱1:「札幌で働く価値」を明確に言語化する

札幌のクリエイティブ企業が持つ独自の価値を、採用メッセージとして発信します。

「札幌で働くこと」の価値は、実は多くあります。

  • 生活コストの低さ:東京の7〜8割の生活コストで、同等以上の生活の質を維持できる。可処分所得で考えれば、報酬差は大幅に縮まる
  • 通勤のストレスの少なさ:札幌の平均通勤時間は東京の半分以下。その分、朝の時間を自分のために使える
  • 自然の豊かさ:スキー、キャンプ、釣り、温泉——休日のリフレッシュの選択肢が豊富。クリエイティビティの源泉になる
  • 食文化の豊かさ:北海道の食材の品質は言うまでもない。日常の食事の満足度が高い
  • 地域密着の仕事のやりがい:東京の広告が「全国の誰か」に届くものだとすれば、札幌の広告は「地域の目の前のお客さん」に届く。反応が直接見えるやりがいがある

これらの価値を、数字やストーリーで具体的に伝えることが重要です。「東京の年収600万円 vs 札幌の年収500万円」では東京に負けますが、「東京の可処分所得350万円 vs 札幌の可処分所得380万円」なら、話は変わってきます。

柱2:報酬制度の見直し——「安いから仕方ない」を超える

報酬で東京と同額にはできなくても、「この報酬は適正だ」と納得できる仕組みを作ることは可能です。

  • スキルベースの報酬設計:「年次」ではなく「スキルレベル」で報酬を決める。スキルが上がれば、年次に関係なく報酬が上がる仕組み
  • インセンティブの設計:クリエイティブの成果に応じたインセンティブ(案件の受注額、クライアントからの評価、コンペの受賞など)
  • 福利厚生の充実:報酬の額面だけでなく、住宅手当、書籍購入費、勉強会参加費、クリエイティブツールのライセンス費用など、「クリエイターが嬉しい福利厚生」を充実させる

札幌のWeb制作会社(社員30名)では、全社員にAdobe Creative Cloud、Figmaのライセンスを付与し、年間10万円のスキルアップ予算(書籍、セミナー、オンライン講座に使用可能)を設けています。「報酬の額面だけでなく、クリエイターとしての環境が整っている」ことが、人材確保の武器になっています。

柱3:成長機会の設計——「札幌にいても成長できる」環境を作る

クリエイティブ人材が最も恐れるのは「スキルの停滞」です。札幌にいても成長し続けられる環境を整えることが、定着の鍵です。

  • 社内勉強会の定期開催:月1回、社員が持ち回りで最新のデザイントレンド、技術、ツールを共有する
  • 外部カンファレンスへの参加支援:東京や海外のクリエイティブカンファレンスへの参加費・交通費を会社が負担する
  • ポートフォリオ制度:社員が自分の作品をポートフォリオとして公開することを推奨し、業界内での個人のブランディングを支援する
  • 副業の許可:本業に影響しない範囲で、個人でのクリエイティブ活動を認める。異なる領域での制作経験が、本業のスキルアップにつながる
  • メンタリングプログラム:社内外のシニアクリエイターとの定期的な面談を設定し、キャリア相談やスキルの方向性を議論する場を作る

柱4:クリエイティブ文化の醸成——「この会社で働きたい」と思わせる環境

クリエイティブ人材は、「文化」に敏感です。「この会社のクリエイティブに対する姿勢が好きだ」——この感覚が、報酬を超える定着要因になります。

  • クオリティへのこだわり:安さで勝負するのではなく、品質で勝負する。「札幌でも東京に負けないクオリティを出す」という姿勢がクリエイターの誇りを生む
  • 自主制作の奨励:業務以外のクリエイティブ活動を奨励する。自主制作の時間を月に数時間確保する「20%ルール」のような仕組み
  • 作品の社内共有:完成した制作物をチームで鑑賞し、フィードバックし合う「クリエイティブレビュー」の場を定期的に設ける
  • オフィス環境:クリエイティビティを刺激するオフィスデザイン。札幌の自然を感じられる空間、集中できるスペースと交流できるスペースの両立

柱5:採用チャネルの多様化——「待つ」採用から「攻める」採用へ

求人広告を出して待つだけでは、優秀なクリエイターは来ません。能動的なアプローチが必要です。

  • SNSでの作品発信:自社の制作実績をSNSで積極的に発信。「こんな仕事をしている会社がある」と知ってもらう
  • クリエイティブコミュニティへの参加:札幌のデザインイベント、ハッカソン、ミートアップに参加し、クリエイターとの接点を作る
  • インターンシップの充実:デザイン系の専門学校・大学との連携で、インターンを受け入れる。「体験してもらう」ことが、最も効果的な採用活動
  • リファラル採用の強化:自社のクリエイターが「この会社はいい」と思えば、知り合いを紹介してくれる。クリエイター同士のネットワークは強い
  • Uターン・Iターン人材へのアプローチ:東京で経験を積んだ北海道出身のクリエイターに、「地元に戻りませんか」とアプローチ。札幌のクリエイティブシーンの活況を伝える

クリエイティブ人材のマネジメント——特有の配慮

クリエイティブ人材のマネジメントには、一般的な人事管理とは異なる配慮が必要です。

配慮1:評価の難しさへの対応

クリエイティブの「質」をどう評価するかは難題です。売上のように数値化しにくい。しかし、評価基準がなければ、「何を頑張ればいいかわからない」状態になります。

評価の軸として、以下を組み合わせることが実践的です。

  • クオリティ:成果物のデザイン品質、クライアントからの満足度
  • スピード:納期の遵守、制作効率
  • 提案力:クライアントの課題に対する解決策の提案
  • チーム貢献:後輩の指導、ナレッジの共有、チーム内の協力
  • 成長:新しいスキルの習得、ポートフォリオの充実

配慮2:「プレイヤーのまま成長できる」キャリアパス

すべてのクリエイターがマネージャーになりたいわけではありません。「手を動かし続けたい」「制作に集中したい」——こうした志向を持つ人のために、マネジメントに進まなくても報酬が上がる「専門職キャリアパス」を用意することが重要です。

配慮3:クリエイティブへの敬意

「デザインなんて誰でもできる」「もっと安くできないの?」——クライアントからこうした言葉を受けた時、会社がクリエイターの仕事の価値をきちんと守れるか。この姿勢が、クリエイターの会社への信頼を決定づけます。


事例:クリエイティブ人材の確保に成功した札幌の企業

事例:札幌のデジタルマーケティング会社(従業員25名)

Webデザイン、SNSマーケティング、動画制作を手がけるこの会社は、デザイナーとディレクターの採用に2年間苦戦していました。求人を出しても応募は少なく、採用してもすぐに東京の企業に転職されるという悪循環でした。

取り組み

  • 報酬制度をスキルベースに変更。4段階のスキルグレードを設定し、各グレードの報酬レンジを明示
  • 年間12万円のスキルアップ予算を全クリエイターに付与
  • 月1回の「クリエイティブレビュー」を開始。全社員が自分の作品を発表し、相互にフィードバック
  • 東京のクリエイティブカンファレンスへの参加を年2回支援
  • Instagramで自社の制作実績を週3回発信
  • デザイン専門学校との連携でインターンを年間4名受け入れ

結果(2年後)

  • クリエイティブ職の応募者数:年間8名から24名に増加
  • 離職率:28%から10%に改善
  • インターン経由の入社:2年間で3名
  • Instagramフォロワー:500名から3,200名に成長
  • クリエイティブの受注単価:平均15%向上(ポートフォリオの充実による信頼向上効果)

社長はこう振り返ります。「報酬を上げるだけでは解決しなかった。クリエイターが『この会社にいると成長できる』『自分の仕事に誇りを持てる』と感じられる環境を作ることが、一番の採用戦略だった」。


クリエイティブ人材確保の「はじめの一歩」

ステップ1:自社のクリエイターに「なぜこの会社にいるか」を聞く

今いるクリエイターが、この会社に残っている理由を聞いてみてください。その答えが、採用メッセージの最も説得力のある素材になります。

ステップ2:SNSで自社の制作実績を発信し始める

来週から、週1回でいいので、自社の制作物をSNSに投稿してみてください。「この会社はこんな仕事をしている」と知ってもらうことが、採用の第一歩です。

ステップ3:クリエイターに「学びの予算」を1万円つける

書籍購入、オンライン講座、セミナー参加——月1万円でいいので、クリエイターの学びへの投資を始める。「自分の成長に会社が投資してくれている」という実感が、定着の力になります。

札幌のクリエイティブ業界は、東京とは異なる独自の強みを持っています。地域に根ざした仕事のやりがい、豊かな暮らし、成長する市場——これらの強みを活かした人材戦略が、札幌の広告・マーケ企業をさらに発展させると、私は確信しています。

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