北海道の中小企業が抱える採用の課題と、それでも人が集まる会社がやっていること
採用・選考

北海道の中小企業が抱える採用の課題と、それでも人が集まる会社がやっていること

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北海道の中小企業が抱える採用の課題と、それでも人が集まる会社がやっていること

「求人を出しても、まったく反応がない」

北海道の中小企業で人事を担当している方から、この言葉を聞かない月はありません。私自身、北海道の企業の人事支援に関わる中で、この問題の根深さを何度も感じてきました。

ただ、同じ北海道でも、しっかり採用できている会社がある。その違いは、意外なところにあります。

あるIT企業の人事担当者が話してくれたことがあります。「採用の話をするとき、経営者に"どんな人を採りたいですか"と聞くと、"誰でもいいから来てくれれば"と言われることが多かった。でも実際に採用できるようになったのは、"Uターンで北海道に戻ってきた30代のエンジニアで、裁量のある環境で成長したい人"と絞り込んでから。ターゲットを絞ると怖い気がするけど、実は絞った方が届く」と。この話が、北海道の採用課題の核心を表していると思います。


「人口が減っているから仕方ない」で止まっていないか

北海道の人口減少は全国的に見ても深刻です。特に地方部では、毎年のように若年人口が減り、有効求人倍率は高止まりしています。

でも、ここで立ち止まってほしいんです。「人口が減っているから採用できない」という認識は、半分正しくて、半分間違っている。

なぜなら、北海道の中でも採用がうまくいっている会社は確実に存在するからです。人口減少という外部環境は同じなのに、結果が違う。ということは、環境以外の要因が結果を分けているということです。

この「環境以外の要因」に目を向けられるかどうかが、採用の成否を分ける最初の分岐点になります。「環境が悪いから仕方ない」で止まっている間に、同じ地域の競合他社が採用の仕組みを整え、優秀な人材を獲得し続けているとしたら、差は広がるばかりです。


北海道の採用市場で起きている3つの構造変化

まず、今の北海道の採用市場で何が起きているかを整理しておきましょう。

1. リモートワークの普及による競争相手の変化

これは北海道に限った話ではありませんが、特に北海道では影響が大きい。札幌に住みながら東京の企業で働く、旭川に住みながらフルリモートでIT企業に勤務する。こうした働き方が当たり前になったことで、北海道の中小企業は地域内の企業だけでなく、全国の企業と採用で競う状況になっています。

給与水準で都市部の企業に正面から対抗するのは現実的ではない。だからこそ、給与以外の訴求ポイントを明確に持っている会社が有利になっています。「リモートではできない仕事の面白さ」「地域に根ざした仕事の意義」——こうした要素を語れる会社が、競合から差別化できます。

2. 求職者の「仕事選びの軸」の変化

かつては「安定した会社」「給料がいい会社」が就職先選びの中心でした。もちろん今もそれは重要ですが、特に20代〜30代の求職者は「この仕事を通じて自分がどう成長できるか」「この会社で働くことが社会にどうつながるか」を重視する傾向が強まっています。

北海道の中小企業でこの変化に対応できているところは、まだ多くありません。求人票に書かれている内容が「仕事内容」「給与」「福利厚生」だけ、というケースがほとんどです。「入社後の成長ストーリー」「社会への貢献」「この地域でしかできない仕事の価値」——こうした要素を語れる求人が、まだ圧倒的に少ないです。

3. 採用チャネルの多様化への対応遅れ

ハローワークと求人媒体に掲載して待つ、というのが北海道の中小企業の採用活動の主流です。もちろんそれ自体は間違いではない。しかし、IndeedやWantedly、SNSでの発信、リファラル採用など、チャネルが多様化している中で、従来型のアプローチだけでは接点を作りにくくなっています。

特にUターン・Iターンを考えている層は、求人媒体よりもSNSやWebメディアで情報収集している傾向が強い。「北海道 移住 仕事」で検索して出てくる情報の多くは、求人媒体ではなくブログやSNSの投稿です。そこに自社の情報が載っているかどうかが、接触の最初の分岐点になります。


採用できている北海道の中小企業に共通する4つのポイント

では、こうした環境の中で採用に成功している北海道の企業は、何をしているのか。私が見てきた中での共通点を整理します。

1. 「北海道で働く意味」を言語化している

これが最も大きな違いです。採用できている会社は、「なぜうちの会社で働くといいのか」だけでなく、「なぜ北海道で働くといいのか」まで言語化しています。

たとえば、帯広の食品加工会社が「十勝の農業を支えるサプライチェーンの一翼を担う仕事」として自社の仕事を位置づけている例があります。単に「食品加工の仕事です」と説明するのと、「十勝の農業を下流から支える仕事です」と説明するのとでは、受け手の印象がまったく違う。特にUターン・Iターン人材にとって、「この地域で働くことの意味」は強い動機になります。

2. 採用ターゲットを明確に絞っている

「誰でもいいから来てほしい」という求人は、結果的に誰にも刺さらない求人になります。採用がうまくいっている会社は、「どんな経験を持った、どんな志向の人に来てほしいか」を具体的に設定しています。

北海道の場合、特に効果的なのは以下のターゲット設定です。

  • 北海道出身で都市部に出ている20〜40代(Uターン層)
  • 北海道の自然環境や食文化に魅力を感じている都市部在住者(Iターン層)
  • 北海道内の他地域や他業種からの転職希望者

ターゲットを絞ることで、メッセージが具体的になり、結果的に応募の質が上がる。これは採用のコストパフォーマンスを大きく改善します。「広く薄く」の採用で1人採れる予算で、「狭く深く」のアプローチなら2〜3人採れる可能性があります。

3. 「中の人」が見える発信をしている

採用サイトの文章が整った企業紹介文だけ、という会社は多いです。でも、求職者が本当に知りたいのは「この会社の人たちはどんな人なんだろう」「どんな雰囲気で働いているんだろう」ということです。

採用がうまくいっている北海道の企業は、社員の声を積極的に発信しています。YouTubeでの社員インタビュー、Instagramでの職場風景の投稿、noteでの人事担当者の発信。こうした「中の人が見える」コンテンツは、特に地方企業にとって有効です。なぜかというと、都市部の大企業と比べて、地方の中小企業のほうが「顔が見える関係性」を作りやすいからです。100人規模の会社のほうが、社員一人ひとりの個性を見せやすい。

4. 入社後の「成長ストーリー」を提示している

「うちに入ったら何ができるようになるか」を具体的に示している会社は強い。北海道の中小企業の場合、都市部の大企業よりも若いうちから裁量の大きな仕事を任されることが多い。「入社1年目でこういうプロジェクトを任された」「3年目でこのポジションに就いた」という具体的なストーリーがあって初めて、「キャリアアップの場としての北海道中小企業」というイメージが伝わります。


採用の前にやるべき「自社の魅力の棚卸し」

ここまで読んで、「うちはそんなに発信するネタがない」と感じた方もいるかもしれません。でも、それは「ネタがない」のではなく、「ネタに気づいていない」可能性が高いです。

自社の魅力の棚卸しで有効なのは、以下の3つの問いです。

  1. 社員に「なぜこの会社で働き続けているのか」を聞く:外から見た魅力と、中にいる人が感じている魅力は違うことが多い。社員の声の中に、自社では当たり前になっている「強み」が隠れていることがあります。「他の会社では経験できなかったことがあった」「この地域でなければできない仕事だった」——こういう言葉の中に、採用メッセージの素材が眠っています。

  2. 辞めた人に「なぜ辞めたのか」を聞く:退職理由の中に、逆説的に自社の改善すべきポイントが見えてくる。「成長実感がなかった」「評価がわかりにくかった」という声が多ければ、そこが採用メッセージで誤魔化せない現実です。改善してから発信するのが誠実ですが、「今はこういう課題を改善中です」と正直に伝えることも、誠実な採用の一形態です。

  3. 「北海道のこの地域だからこそ」の要素を探す:気候、食、自然、コミュニティの特性。こうした地域固有の要素は、移住を検討している人にとって重要な判断材料になります。「帯広の冬は寒いけど、その分星空が美しい」「釧路の霧の朝が好きで戻ってきた」——こういう個人的な語りが、採用候補者の心を動かすことがあります。


採用活動の「成果指標」を明確にする

採用の仕組みを変えていく上で、「何を測るか」を決めておくことが重要です。採用できたかどうかだけでなく、採用の質を測る指標を持つことで、改善の方向性が見えてきます。

よく使われる採用の質指標として、以下があります。

  • 早期離職率(入社1年以内の離職率):採用ミスマッチの指標
  • 内定承諾率:採用プロセスの魅力度の指標
  • 採用チャネル別コスト:どのチャネルが費用対効果が高いかを把握
  • 入社後1年の評価スコア平均:採用した人材の質の指標

これらを測り続けることで、「今年はどのチャネルが効果的だったか」「採用メッセージの変更が承諾率に影響したか」を判断できるようになります。感覚から数字へ——この転換が、採用の精度を年々高めていきます。


採用は「コスト」ではなく「投資」として設計する

最後に、ひとつだけ経営的な視点を補足します。

北海道の中小企業では、採用活動を「コスト」として捉えている経営者が少なくありません。「求人広告にお金をかけても来ない」「採用にそこまで予算は出せない」。こういった声はよく聞きます。

しかし、採用は本来「投資」です。一人の社員を採用して3年間勤めてもらうと、その間の人件費は1,000万円を超えることも珍しくない。そこにプラスして教育コストもかかります。採用が失敗して早期離職になった場合、採用コスト(80〜150万円)+育成コスト(50万円)+次の採用コストが丸ごとかかります。

つまり、「誰を採用するか」は、年間数百万円規模の投資判断をしているのと同じことです。その投資判断の精度を上げるために、採用メッセージの設計や発信チャネルの整備にリソースを投じるのは、十分にリターンが見込める投資のはずです。

人口が減っている地域だからこそ、一人ひとりの採用の重みが増している。北海道の企業にとって、採用の仕組みを見直すことは、事業の持続可能性に直結するテーマです。


まとめ:北海道の採用課題を乗り越えるために

北海道の中小企業が採用で苦戦しているのは、人口減少だけが原因ではありません。採用市場の構造変化に対応できていないことが、大きな要因です。

一方で、その変化に対応して採用に成功している企業もある。そこには「北海道で働く意味の言語化」「ターゲットの絞り込み」「中の人が見える発信」「成長ストーリーの提示」という共通点があります。

まずは自社の魅力を棚卸しするところから始めてみてください。答えは外にあるのではなく、すでに社内にある可能性が高いです。採用の仕組みを変えるのに、大きな予算は必要ありません。「何を伝えるか」と「誰に伝えるか」を変えるだけで、採用の結果が変わり始めることがあります。

採用の改善は、すべてを一度にやろうとすると挫折しやすい。まず一つのチャネル、一つのメッセージを変えてみる。「Uターン候補者向けのSNS発信を月2回始めた」「求人票に社員のコメントを1行追加した」——こうした小さな変化が、半年後の採用結果に影響することがあります。採用の仕組みは、試行錯誤の積み重ねで育ちます。


人事の仕事は、一人で抱えると行き詰まりやすいものです。同じ課題に向き合う人事同士がつながれる場として、人事図書館をご活用ください。

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