北海道へのUIターン採用を成功させるために、人事が設計すべき3つの仕組み
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北海道へのUIターン採用を成功させるために、人事が設計すべき3つの仕組み

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北海道へのUIターン採用を成功させるために、人事が設計すべき3つの仕組み

「北海道に帰りたい」「北海道で暮らしたい」——そう考えている人は、実はかなりいます。

内閣府の調査でも、東京圏に住む20代〜40代のうち、地方への移住に関心を持っている人は約4割という結果が出ています。北海道は移住先としての人気が高く、ブランド力もある。それなのに、なぜ北海道の企業のUIターン採用はうまくいかないことが多いのか。

あるIT企業の人事担当者が話してくれたことがあります。「"北海道出身で戻りたい"という人からの応募が来た。でも最終面接まで進んで内定を出したら辞退された。理由を聞くと"入社後の生活がイメージできなかった"と言われた。家賃がどのくらいか、通勤がどうなのか、子どもの学校事情はどうか——そういう情報を一切提供していなかったことに気づいた」と。仕事の情報だけでは、移住の決断には至らないんだと学んだと話していました。

私が見てきた限り、UIターン採用がうまくいかない原因は「来たい人がいない」のではなく、「来る仕組みができていない」ことにあります。


UIターン希望者が北海道の企業を選べない理由

まず、UIターン希望者の目線で考えてみましょう。

東京で5年、10年と働いてきた人が「北海道に戻りたい」と思ったとき、最初にぶつかるのは情報の壁です。「北海道にはどんな会社があるのか」「自分のスキルが活かせる仕事があるのか」「給与水準はどのくらい変わるのか」——こうした情報が、都市部にいると驚くほど入ってこない。

北海道の企業側は「うちは採用をしています」と思っている。でも、その情報が東京や大阪にいる移住希望者に届いていない。求人媒体に掲載していても、そもそもその媒体を見ていない。ハローワークに出していても、UIターン希望者がハローワークの求人を検索するのは転職活動の後半です。

つまり、「接点の設計」ができていないことが、北海道のUIターン採用の最大のボトルネックになっている。接点が生まれないところには、選考も内定も生まれません。


仕組み1:「移住前」の接点をオンラインで作る

UIターン採用で最初に取り組むべきは、まだ北海道に来ていない段階での接点づくりです。

具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。

オンライン会社説明会の定期開催

「会社見学に来てください」と言っても、東京から北海道まで来るのはハードルが高い。まずはオンラインで自社の雰囲気や仕事内容を伝える場を作ることが重要です。

ポイントは、採用説明会という形式にこだわらないこと。「北海道で働くってどんな感じ?」というカジュアルなトークイベントのほうが参加しやすい。自社の社員に登壇してもらって、「私はこうやって北海道に移住して、今こんな生活を送っています」という等身大の話をしてもらう。月1回30分のオンラインイベントでも、継続することで「この会社はUIターン採用に本気だ」という印象を与えられます。

SNSでの「北海道の暮らし」発信

UIターンを考えている人は、仕事情報だけでなく「暮らしの情報」も探しています。家賃はどのくらいか、通勤はどうなのか、子育て環境はどうか——こうした情報を発信している企業は、採用候補者との接点を増やせます。

企業の採用アカウントで、暮らしの情報を発信するのは非常に有効です。「今日の札幌の朝は-10度でした。でも地下道があるから意外と通勤は快適です」「帯広のランチ事情をご紹介」——こういう投稿が、実は採用につながる。仕事情報だけで人を引きつけようとするのではなく、「北海道で暮らす」という体験全体を見せることが、UIターン採用のカギです。

移住支援制度との連携

北海道には、自治体ごとにさまざまな移住支援制度があります。移住支援金、住宅補助、子育て支援など。これらの情報を自社の採用情報と合わせて発信している企業は、まだ少数派です。

「うちで働くと、自治体の移住支援金が受けられます」「住宅補助と合わせると、東京と比べて実質的な生活コストはこのくらいになります」——こういった情報を具体的な数字で示すことで、UIターン希望者の意思決定を後押しできます。生活コストの差を可視化することが、「給与が下がっても北海道で働く」という判断を支えます。


仕組み2:「移住の不安」を解消する受け入れ体制

UIターン採用の難しさは、内定を出した後にもあります。

都市部から北海道に移住するということは、仕事だけでなく生活のすべてが変わるということです。住む場所、人間関係、日常の買い物、子どもの学校。この変化への不安が、内定辞退の大きな原因になります。採用候補者が「内定を断った理由」として最も多いのが「生活のイメージが湧かなかった」という声です。

採用に成功している北海道の企業は、この「移住の不安」を解消する仕組みを持っています。

入社前のトライアル制度

いきなり移住して入社するのではなく、1〜2週間のトライアル勤務期間を設けている会社があります。この期間中に実際の業務を体験してもらい、同時に北海道での生活も体感してもらう。

「やっぱり合わなかった」という場合は、お互いにとってその段階でわかったほうがいい。一人の早期離職が発生した場合の損失(採用コスト+教育コスト+機会損失)は、採用コスト80〜150万円に加えて入社後の育成コスト50万円程度が加わり、合計150〜200万円規模になることも珍しくありません。トライアル制度の運用コストと比較すれば、十分に合理的な投資です。

メンター制度の導入

UIターンで入社した社員に、同じくUIターン経験のある先輩社員をメンターとしてつける仕組みです。仕事のことだけでなく、「冬の運転のコツ」「おすすめのスーパー」「子どもの習い事事情」など、生活面の相談もできる関係を作る。「仕事はわかるけど生活がわからない」という孤立感が離職の引き金になることが多いため、この仕組みは定着率を大きく改善します。

家族向けの情報提供

UIターンの意思決定には、本人だけでなく家族の意向も大きく影響します。特に配偶者の就職先や子どもの教育環境は、移住のハードルになりやすい。

先進的な企業では、内定者の家族向けに地域の情報をまとめた資料を提供したり、配偶者の就職先探しをサポートしたりしています。「ご家族もぜひオンライン説明会に参加してください」という一言が、家族の不安を解消する大きな一歩になります。

内定承諾後から入社までのコミュニケーション設計

内定を出してから入社するまでの期間、連絡が途絶えると「本当にこの会社に行っていいのか」という迷いが生まれ、辞退リスクが高まります。「内定から入社まで月1回タッチポイントを作る」という習慣だけで、辞退率を下げた企業が複数あります。「来月から一緒に働けるのを楽しみにしています」という一通のメールが、候補者の不安を和らげることがあります。


仕組み3:「入社後の成長」を可視化するキャリアパス設計

UIターン希望者がもうひとつ気にしているのは、「北海道の中小企業に行ったら、キャリアが止まるのではないか」という不安です。

都市部の大企業で働いていた人にとって、地方の中小企業への転職は「キャリアダウン」に見えることがある。この懸念を払拭できないと、優秀な人材のUIターンは実現しません。採用で負けているのは「給与の差」ではなく「キャリアイメージの差」であることが多いです。

3年後・5年後のキャリアイメージを具体的に提示する

「うちの会社に来たら、3年後にはこういうポジションで、こういう仕事ができるようになります」という具体的なキャリアパスを示すことが大切です。

北海道の中小企業の強みは、都市部の大企業に比べて「早い段階で裁量のある仕事を任される」という点です。東京の大企業で5年かかるポジションに、3年で就ける可能性がある。「スピードの速いキャリア形成」を具体的な社員事例で示すことで、キャリアダウンではなくキャリアアップとして捉えてもらえます。

スキルアップの仕組みを整備する

外部研修への参加支援、資格取得支援、業界カンファレンスへの派遣——こうした「学び続けられる環境」の存在は、キャリア志向の高い人材にとって重要な判断材料です。

「北海道の企業で働いていても、スキルが磨き続けられる」ということを制度として保証することが、UIターン人材の獲得につながります。年間の育成予算を明示し、どんな研修や資格取得を支援しているかを採用情報に入れることが有効です。

越境的な経験の機会を用意する

北海道の企業同士の交流、異業種交流、地域プロジェクトへの参画——こうした「自社の仕事以外の経験」ができる環境も、UIターン人材にとっては魅力的です。

都市部にいると「一つの会社の中でキャリアを積む」イメージが強いですが、地方では「地域全体でキャリアを積む」という発想が可能です。「この地域で自分が何者になれるか」というイメージを持てるかどうかが、移住の意思決定を後押しします。


UIターン採用でよくある失敗パターン

UIターン採用に取り組んでいる北海道の企業でよく見かける失敗を整理しておきます。

「採用したら終わり」になる:入社後のフォローがないまま、UIターン社員が孤立して辞めてしまうケースがあります。定着させるための仕組みが採用と同じくらい重要です。

「都市部のスキルを期待しすぎる」:「東京でエキスパートだったから、すぐに活躍してくれるはず」という期待が大きすぎると、現地の文化や人間関係への適応に時間がかかる現実とのギャップが生まれます。「まず慣れることを最優先にする」という受け入れ側の心構えが大切です。

「地域情報を出し惜しみする」:「住宅情報は聞かれたら答える」ではなく、「こちらから積極的に提供する」姿勢が、候補者の安心感につながります。地元の人にとっては当たり前の情報が、移住を検討している人にとっては貴重です。


UIターン採用は「経営戦略」として位置づける

ここまで3つの仕組みを紹介しましたが、これらを実行するには相応のリソースが必要です。「うちにはそこまでの余裕がない」と感じる方もいるでしょう。

しかし、UIターン採用は単なる「人集め」ではありません。北海道で事業を継続・拡大していくための経営戦略そのものです。

特に、都市部で経験を積んだ人材を獲得できれば、社内にはない知見やスキルが入ってくる。新しい視点が事業の成長を加速させることは、多くの企業で実証されています。採用を「コスト」として捉えると後回しになりがちですが、「事業の成長投資」として位置づけると、優先順位が変わります。

逆に、人材が確保できなければ、事業そのものが縮小していくリスクがある。北海道の中小企業にとって、UIターン採用の仕組みを整えることは、将来の事業継続に向けた先行投資です。


最初の一歩は「今いるUIターン社員に話を聞く」こと

最後に、明日から始められることをひとつ提案します。

もし社内にUIターンで入社した社員がいれば、その人に話を聞いてみてください。「なぜ北海道に来たのか」「入社前に何が不安だったか」「今、何に満足していて、何に不満があるか」。

この声の中に、自社のUIターン採用を改善するヒントが必ずあります。そして、その社員のストーリーこそが、次のUIターン人材を引きつける最も強力なコンテンツになるはずです。「同じ状況の先輩が活き活きと働いている」という事実が、移住を迷っている人の背中を押します。コストをかけずにできる、最もリアルな採用ブランディングがそこにあります。

UIターン採用は、一度の施策で完結するものではありません。「来てくれた人が定着し、活躍し、次の採用候補者に自社の良さを話してくれる」——この好循環を作ることが、長期的なUIターン採用の成功につながります。


人事の仕組みづくりに正解はありません。でも、同じ課題に取り組む仲間がいると、見えてくるものがあります。

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