北海道の中小企業が「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる方法——片方だけでは人は残らない
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北海道の中小企業が「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる方法——片方だけでは人は残らない

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北海道の中小企業が「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる方法——片方だけでは人は残らない

「うちは福利厚生を充実させたし、残業も減らした。でも、若手が辞めるんです。『やりがいがない』って」

帯広のサービス業の社長が、困惑した表情で話してくれました。一方、こんな声もあります。

「仕事はやりがいがあるんです。でも、毎日10時間働いて、休みも取れない。体が持たなくて辞めました」

旭川の元建設会社社員の言葉です。

「働きがい」と「働きやすさ」。この2つは、似ているようで異なる概念です。そして、社員が長く働き続けるためには、どちらか一方では足りません。両方が揃って初めて、社員は「この会社にいたい」と思えるのです。

私はこれまで500社以上の企業の人事を支援してきましたが、この2つのバランスを取ることに苦労している企業は非常に多い。特に北海道の中小企業では、経営資源が限られる中で、どちらに優先的に投資すべきかが悩みどころです。この記事では、その両立の考え方と具体的な方法を探ります。


「働きがい」と「働きやすさ」は何が違うのか

まず、この2つの概念を整理します。

「働きやすさ」とは——ストレスや不満を減らす要因

  • 適切な労働時間(残業が少ない)
  • 休暇が取りやすい
  • 給与・福利厚生が適正
  • 職場環境が快適(設備、温度、清潔さ)
  • 人間関係が良好
  • 柔軟な勤務形態(フレックス、リモートなど)

これらは、「ないと不満になる」要因です。働きやすさが低いと、社員は不満を感じて辞めます。しかし、働きやすさだけが高くても、「ここにいたい」という積極的な理由にはなりにくい。

「働きがい」とは——モチベーションや充実感を生む要因

  • 仕事の意味を感じる(社会に貢献している実感)
  • 成長の実感がある(新しいことを学べる、スキルが上がる)
  • 自分の仕事が認められている(承認、感謝)
  • 裁量がある(自分で考え、判断できる)
  • 挑戦の機会がある(新しいプロジェクト、新しい役割)
  • チームの一体感がある(仲間と共に目標に向かう)

これらは、「あるとモチベーションが上がる」要因です。働きがいが高いと、社員は「この仕事が好きだ」「この会社で頑張りたい」と感じます。

片方だけでは人は残らない

  • 働きやすいが、働きがいがない → 「楽だけど、つまらない。もっと面白い仕事がしたい」と辞める
  • 働きがいはあるが、働きやすくない → 「面白いけど、体がもたない。家庭との両立ができない」と辞める
  • 両方が揃っている → 「この会社で長く働きたい」と思える

北海道の中小企業が陥りがちな「片方偏り」

パターン1:「働きやすさ」偏重型

「社員に優しくしよう」という善意から、残業削減、休暇の充実、職場環境の改善に注力する。しかし、仕事の内容や成長の機会については手つかず。結果として、「居心地はいいけど、成長できない」と感じる社員が出てくる。

特に若手にとって、「成長の実感」は極めて重要です。「楽だけど、自分が何者にもなれない会社」には、長くはいません。

パターン2:「働きがい」偏重型

「仕事にやりがいがあるから、少しくらいの無理は仕方ない」——この考え方で、長時間労働や休暇の少なさを放置する。確かに、やりがいのある仕事に没頭している間は、社員は頑張れます。しかし、それは持続可能ではない。

いつか体を壊す、家庭が壊れる、バーンアウトする——「やりがい搾取」と呼ばれる状態に陥るリスクがあります。


「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる「5つのアプローチ」

アプローチ1:仕事の「意味」を伝える——目の前の業務と事業の目的をつなげる

日常の業務が、どう事業に貢献しているのか。事業が、どう社会に貢献しているのか。この「つながり」を社員に伝えることが、働きがいの土台です。

「あなたが加工しているこのホタテは、東京の高級レストランで提供されて、お客さんが笑顔になっている」——この一言が、単調に思える作業に意味を与えます。

経営者が定期的に、会社のビジョンや事業の意義を語る場を設ける。月次の全社ミーティング、朝礼、社内報——どんな形でもいいので、「うちの仕事はなぜ大切なのか」を繰り返し伝えてください。

アプローチ2:成長の機会を「仕組み」として提供する

「成長」は自然に起こるものではなく、仕組みとして提供するものです。

  • スキルマップの整備:「何ができるようになれば次のレベルに進めるか」を可視化する
  • 研修・教育の機会:社内研修、外部研修、資格取得支援。年間の教育計画を作成し、全社員に学びの機会を提供する
  • 挑戦の機会:新しいプロジェクト、新しい役割、異なる部署の経験——「いつも同じ仕事」ではなく、「新しいことに挑戦できる」環境を作る
  • フィードバックの充実:1on1ミーティングで、定期的にフィードバックを伝える。「あなたはここが成長した」「次はここに挑戦してみては」——この言葉が、成長の実感を生む

釧路の物流会社では、「チャレンジ制度」を導入しています。半年に1回、社員が「やってみたい仕事」を申告でき、可能な範囲で異動や兼務を認める仕組みです。この制度を利用して、営業からマーケティングに異動した社員が、SNSを活用した新規顧客開拓で成果を上げています。

アプローチ3:「承認」の文化を根づかせる

人は、自分の仕事が認められていると感じると、モチベーションが上がります。逆に、どれだけ頑張っても認められなければ、やる気を失います。

承認は、大げさなものである必要はありません。

  • 「ありがとう」の一言を日常的に伝える
  • 朝礼や会議で、良い仕事をした人を紹介する
  • 半年に1回の表彰制度(「ベスト改善賞」「チームワーク賞」など)
  • 人事評価のフィードバックで、成果だけでなくプロセスや努力を認める

小樽の製造業では、「サンクスカード」の仕組みを導入しています。社員同士が「ありがとう」のメッセージをカードに書いて渡し合う。月に最も多くのカードを受け取った社員を表彰する。「小さなことだけど、カードをもらうと本当に嬉しい」——社員の声です。

アプローチ4:裁量と自律を尊重する

人は、自分で考え、自分で決め、自分で行動できるとき、最も力を発揮します。逆に、細かく管理され、指示通りにしか動けない環境では、創造性もモチベーションも低下します。

  • 仕事の「目的」を伝え、「やり方」は本人に任せる
  • 失敗を責めるのではなく、チャレンジを奨励する
  • 意思決定の権限を現場に委譲する(可能な範囲で)

ただし、「任せる」と「放置する」は違います。裁量を与えつつ、定期的に状況を確認し、困った時にはサポートする。この「任せつつ支える」バランスが重要です。

アプローチ5:「働きやすさ」の土台を整える

働きがいの施策を効果的にするには、働きやすさの土台が不可欠です。

  • 労働時間の適正化:慢性的な長時間労働を解消する
  • 休暇取得の促進:有給休暇を取りやすい雰囲気を作る
  • 職場環境の整備:快適な作業環境、休憩スペースの充実
  • 人間関係の改善:ハラスメントの防止、コミュニケーションの活性化
  • 柔軟な勤務形態:個々の事情に合わせた働き方の選択肢

「両立」の度合いを測定する

「働きがい」と「働きやすさ」の両立がどの程度実現できているかを、定期的に測定することが重要です。

簡易アンケートの実施

年に2回、以下のようなアンケートを全社員に実施します。

「働きやすさ」に関する質問:

  • 労働時間は適切か(1〜5のスケール)
  • 休暇は取りやすいか
  • 職場の環境は快適か
  • 上司や同僚との関係は良好か

「働きがい」に関する質問:

  • 仕事にやりがいを感じているか
  • 成長の実感があるか
  • 自分の仕事が会社に貢献していると感じるか
  • この会社で働き続けたいと思うか

それぞれのスコアを部署別、年次別に分析し、「働きやすさは高いが、働きがいが低い部署」や「働きがいは高いが、働きやすさが低い年次」を特定する。そこに集中的に施策を打つことで、効率的に改善が進みます。


事例:「働きがい」と「働きやすさ」の両立に成功した北海道の中小企業

事例:札幌のサービス業(従業員40名)

この企業は、「働きやすさ」には定評がありました。残業は月平均10時間、有給取得率は70%、福利厚生も充実。しかし、離職率が年15%と高めで、退職理由の多くが「やりがいがない」「成長できない」でした。

取り組み

  • 全社員にスキルマップを導入し、「次に何を学べばいいか」を明確化
  • 月1回の「チャレンジプレゼン」を開催。社員が自分のアイデアを経営陣に直接提案できる場を作った
  • 「サンクスカード」制度を導入し、承認の文化を育んだ
  • 半年に1回の「キャリア面談」で、社員の成長の希望を聞き、育成計画に反映
  • 「働きがい」に関するアンケートを新設し、四半期ごとに測定

結果(1年後)

  • 離職率:15%から7%に改善
  • 「仕事にやりがいを感じる」と答えた社員:48%から76%に増加
  • 「成長の実感がある」と答えた社員:35%から68%に増加
  • 「この会社で働き続けたい」と答えた社員:52%から81%に増加
  • チャレンジプレゼンから実際に事業化されたアイデア:3件

社長の感想は印象的でした。「『社員に優しくしていれば大丈夫』と思っていたが、それだけでは足りなかった。『成長できる』『挑戦できる』という環境を作ることが、本当の意味での優しさだったのかもしれない」。


「両立」のための「はじめの一歩」

ステップ1:社員に聞いてみる

「今の仕事で、何にやりがいを感じますか?」「働きやすさで改善してほしいことは何ですか?」——この2つの質問を、5名の社員に聞いてみてください。答えの中に、次に取り組むべきヒントがあります。

ステップ2:「ありがとう」を意識的に伝える

来週から、1日1回、社員に「ありがとう」と伝えることを意識してみてください。小さな承認の積み重ねが、働きがいの土壌を作ります。

ステップ3:成長の機会を一つ提供する

社員に「やってみたいこと」を聞き、一つだけ挑戦の機会を提供する。新しいプロジェクト、外部研修、異なる業務の体験——一つの経験が、社員の「ここで成長できる」という実感を生みます。

「働きがい」と「働きやすさ」の両立は、一朝一夕には実現しません。しかし、小さな一歩の積み重ねが、やがて「この会社にいたい」と思える組織を作ります。北海道の中小企業が、人口減少の時代に社員と共に成長し続けるために——その両立の第一歩を、今日から始めていただきたいと思います。

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