
北海道の企業がテレワークとオフィスのハイブリッド型を設計する方法——「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」
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北海道の企業がテレワークとオフィスのハイブリッド型を設計する方法——「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」
「テレワークを続けたい社員と、出社したい社員がいて、どちらに合わせればいいのかわからないんです」
札幌のIT企業の人事担当者が、こう相談してきました。コロナ禍をきっかけにテレワークを導入した企業は多い。その後、「全員出社に戻す」企業もあれば、「テレワークを継続する」企業もある。そして、最も多いのが「どうすればいいかわからず、なんとなく中途半端な状態が続いている」企業です。
テレワークにはメリットがあります。通勤時間の削減、柔軟な働き方、ワークライフバランスの向上。しかし、デメリットもあります。コミュニケーションの希薄化、チームの一体感の低下、若手の育成の難しさ。
「テレワークかオフィスか」という二者択一ではなく、「テレワークとオフィスをどう組み合わせるか」を設計する。これが、ハイブリッドワークの本質です。
私はこれまで500社以上の企業の人事を支援してきましたが、ハイブリッドワークの設計で成功している企業は、「ルール」ではなく「目的」から考えています。この記事では、北海道の企業がハイブリッドワークをどう設計すべきかを考えます。
北海道の企業がハイブリッドワークを考えるべき理由
理由1:冬期の通勤リスクの軽減
北海道の冬は、通勤自体がリスクです。吹雪、路面凍結、JRの運休——冬期に「今日は出社が危険」という日は珍しくありません。ハイブリッドワークの仕組みがあれば、こうした日にテレワークに切り替えることで、事業を止めずに済みます。
理由2:広域な人材獲得
北海道は広大です。札幌の企業が旭川や帯広に住む人材を採用する場合、「毎日出社」が前提では候補者が限られます。ハイブリッドワークを導入すれば、道内の広域から人材を獲得できる可能性が広がります。
理由3:採用競争力の強化
テレワークの選択肢がある企業とない企業では、特にIT人材やオフィスワーカーの採用で差が出ています。「テレワークはできますか?」は、候補者からの定番の質問になっています。
理由4:BCP(事業継続計画)の強化
大雪、地震、感染症——北海道では、オフィスに出社できない事態が定期的に起こります。ハイブリッドワークの体制が整っていれば、こうした緊急時にも事業を継続できます。
ハイブリッドワークの設計で最初に考えるべきこと
ハイブリッドワークの設計で最も重要なのは、「何のために集まるのか」「何のためにテレワークするのか」を明確にすることです。
オフィスに集まる目的(対面が効果的な業務)
- チームでの議論やブレインストーミング
- 対面での1on1や評価面談
- 新入社員の教育・OJT
- 顧客との対面ミーティング
- チームの一体感を醸成するイベント
- 設備や現場が必要な業務
テレワークが効果的な業務
- 集中力が必要な個人作業(資料作成、分析、コーディング)
- 定型的な事務作業
- オンラインで完結するミーティング
- レポートの作成やデータ入力
この「目的」に基づいて、「いつオフィスに来るべきか」「いつテレワークでよいか」のルールを設計します。
ハイブリッドワークの「4つの設計モデル」
北海道の企業で実際に機能しているハイブリッドワークの設計モデルを紹介します。
モデル1:固定曜日型
「月・水・金はオフィス、火・木はテレワーク」のように、出社日を固定する。
メリット:シンプルでわかりやすい。チーム全員が揃う日が明確。 デメリット:個人の事情への柔軟性が低い。
モデル2:最低出社日数型
「週に3日以上出社。残りはテレワーク可。出社日は自分で選ぶ」
メリット:個人の事情に合わせやすい。柔軟性が高い。 デメリット:チーム全員が揃う日が不確実。
モデル3:目的ベース型
「対面が必要な業務の時は出社。それ以外はテレワーク可」
メリット:業務の性質に最も合った働き方ができる。 デメリット:「対面が必要かどうか」の判断が曖昧になりやすい。管理者の裁量に依存。
モデル4:チーム決定型
「出社日やテレワーク日は、各チームで話し合って決める」
メリット:チームの業務特性に合わせられる。現場の自律性が高い。 デメリット:チーム間でルールが異なり、不公平感が出る可能性がある。
札幌のIT企業(社員45名)では、「モデル2+チーム調整」を採用しています。週3日以上の出社を基本ルールとしつつ、各チームで「この曜日は全員出社」という「チームデー」を1日設定。残りの出社日は個人の裁量で決める。この設計が、柔軟性とチームの一体感のバランスを取っています。
ハイブリッドワークの運用で注意すべきポイント
ポイント1:「テレワーク格差」を生まない
テレワークが可能な職種(事務、IT、企画など)と、現場に出る必要がある職種(製造、建設、接客など)の間に、不公平感が生じやすい。
対策として、テレワークが難しい職種に対しては、別の形での柔軟性を提供する。フレックスタイム、シフトの選択制、月1回のリフレッシュ休暇など。「テレワークはできないが、別の形で働きやすさを感じられる」状態を作ることが重要です。
ポイント2:テレワーク時のコミュニケーション設計
テレワーク時に「情報が届かない」「相談しにくい」状況を防ぐための仕組みを整えます。
- 朝の短いオンラインミーティング(10分程度で、今日やることを共有)
- チャットツールの活用(気軽な質問・相談ができる場)
- 週1回の対面またはオンラインでの1on1
- 共有ドキュメントの活用(情報を個人のメールではなくチームで共有)
ポイント3:成果で評価する仕組みへの移行
テレワークでは、「何時間デスクに座っていたか」が見えません。出勤時間や在席時間ではなく、「何を成し遂げたか」で評価する仕組みが不可欠です。
目標設定と成果の評価を明確にし、「オフィスにいたから偉い」「テレワークだからサボっている」という誤解を生まない文化を作ること。
ポイント4:新入社員・若手への配慮
テレワークが最も難しいのは、入社間もない社員です。「誰に聞けばいいかわからない」「職場の雰囲気がつかめない」——テレワーク環境では、これらの問題が深刻化します。
新入社員の最初の3〜6か月は、原則出社とする。またはバディ制度を導入し、テレワーク時でも「すぐに連絡できる先輩」を確保する。
北海道の企業ならではのハイブリッドワークの工夫
工夫1:冬期テレワークの推奨
冬期(12〜3月)は、テレワークの比率を高めることを推奨する「冬期テレワーク制度」。通勤のリスクとストレスを軽減し、社員の安全を確保するとともに、冬期特有のメンタルヘルスリスクにも対応します。
工夫2:サテライトオフィスの活用
札幌に本社がある企業が、旭川や帯広にサテライトオフィス(またはコワーキングスペースの法人契約)を設けることで、道内の広域人材が「月に数回だけ札幌に出張」という働き方が可能になります。
工夫3:ワーケーションの活用
北海道の自然環境を活かした「ワーケーション」の導入。繁忙期が終わった後に、道内のリゾート地でテレワークをしながらリフレッシュする。ニセコ、富良野、知床——北海道には魅力的なワーケーション先が豊富です。
事例:ハイブリッドワークを成功させた北海道の企業
事例:札幌のソフトウェア開発会社(従業員60名)
この企業は、コロナ禍でフルリモートに移行し、その後「全員出社」に戻そうとしたところ、離職が相次いだ経験を持っています。「テレワークがなくなるなら辞める」という社員が5名も出たことが、ハイブリッドワークの設計に本腰を入れるきっかけになりました。
設計したルール
- 基本ルール:週3日出社、2日テレワーク
- チームデー:各チームで週1日、全員出社の日を設定
- 冬期緩和:12〜3月は週2日出社、3日テレワーク可
- 新入社員:入社後3か月は週4日出社(バディ制度と併用)
- コアタイム:10時〜15時(出社・テレワークともに連絡可能な時間)
- 朝会:毎日10時にオンラインで10分の朝ミーティング
結果(1年後)
- 離職率:18%から8%に改善
- 採用時の「テレワーク可ですか?」への回答で候補者の辞退が激減
- 道内(旭川、帯広)在住のエンジニア2名を新規採用
- 冬期の遅刻・欠勤:前年比50%減
- 社員アンケートの「働き方の満足度」:62%から84%に向上
- 生産性指標(1人あたり受注額):前年比105%(テレワーク導入後も生産性は維持・向上)
社長の言葉が印象的でした。「最初は『出社してもらわないと管理できない』と思っていた。でも実際にやってみたら、成果で見ればテレワークの日のほうが生産性が高い社員もいた。大事なのは『どこにいるか』ではなく『何を成し遂げるか』だと気づいた」。
ハイブリッドワーク設計の「はじめの一歩」
ステップ1:「対面が必要な業務」と「テレワーク可能な業務」を仕分ける
自社の業務を「対面必須」「対面が望ましい」「テレワーク可能」の3つに仕分けてみてください。この仕分けが、ハイブリッドワーク設計の出発点になります。
ステップ2:「週に1日だけテレワーク」から試してみる
いきなり大きなルール変更をする必要はありません。まず「毎週水曜日はテレワーク可」から始めてみる。1〜2か月試した後に、うまくいった点と課題を洗い出して、制度を調整する。
ステップ3:社員の声を聴く
「どういう働き方がしたいか」を社員に聞いてみてください。アンケートでも、1on1でも構いません。社員の声を起点に設計することで、納得感のある制度ができます。
ハイブリッドワークは、「テレワークの制度」ではなく「働き方の設計」です。オフィスとテレワークのそれぞれの長所を活かし、組み合わせることで、社員の生産性と満足度の両方を高める。北海道の厳しい冬と広大な地理を考えれば、ハイブリッドワークは「選択肢」ではなく「必然」になりつつあると、私は感じています。
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