北海道の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——「支える人」が自分の成長を後回しにしないために
キャリア・人事の成長

北海道の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——「支える人」が自分の成長を後回しにしないために

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北海道の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——「支える人」が自分の成長を後回しにしないために

「社員のキャリアは考えるのに、自分のキャリアは考えたことがなかった」

釧路の水産加工会社で人事を担当する方が、ある研修の後にぽつりと漏らした言葉です。この方は15年間、採用、労務、評価制度の運用、社員の相談対応——あらゆる人事業務をほぼ一人でこなしてきました。社員のキャリア面談は丁寧に行い、若手の育成計画も立てている。しかし、自分自身のキャリアについては「考える余裕がなかった」のです。

私は、この状況を多くの北海道の企業で見てきました。人事担当者は「支える側」の仕事です。社員の採用、育成、評価、退職対応——すべて「他者のため」の業務。その結果、自分自身の成長やキャリアが後回しになりがちです。

しかし、人事担当者が成長を止めれば、組織全体の人事機能も停滞します。人事担当者自身がキャリアを考え、学び、成長し続けることは、組織にとっても重要な投資なのです。

この記事では、北海道の企業で人事を担当する方々が、自分自身のキャリアをどう考え、どう育てていくかについて解説します。


人事担当者のキャリアが見えにくい理由

理由1:「人事の専門家」というキャリアパスが社内にない

大企業であれば、人事部の中にさまざまなポジション(採用担当、制度企画、労務管理、人材開発など)があり、人事のプロフェッショナルとしてキャリアを積み上げていくことができます。しかし、北海道の中小企業では人事担当者が1名、あるいは兼任というケースが多い。「人事の中でのキャリアアップ」という道筋が見えにくいのです。

理由2:成果が見えにくい仕事

営業であれば売上、製造であれば生産量、開発であれば新商品——他の職種は成果が数字で見えやすい。しかし、人事の仕事は「離職率が下がった」「社員満足度が上がった」「採用がうまくいった」といった成果が出るまでに時間がかかり、他の要因との切り分けも難しい。自分の仕事の成果が見えにくいため、キャリアへの手応えを感じにくいのです。

理由3:「何でも屋」になりやすい

中小企業の人事担当者は、採用も労務も教育も総務も、場合によっては経理までカバーします。この「何でも屋」状態では、専門性が深まりにくく、「自分の強みは何か」が見えにくくなります。

理由4:社内に「人事の先輩」がいない

「人事のキャリアについて相談できる人が社内にいない」という声をよく聞きます。営業であれば先輩営業がいて、技術であれば先輩技術者がいる。しかし、人事は社内に先輩がいない、あるいは上司が人事の専門家ではない(総務部長が人事も管轄しているが、人事の経験はない、など)ことが多い。ロールモデルが不在なのです。

理由5:「人事は裏方」という自己認識

「自分は裏方だから、目立つ必要はない」「社員の成長をサポートするのが仕事で、自分のキャリアは二の次」——こうした意識を持つ人事担当者は少なくありません。この自己認識が、自分のキャリア開発への投資を躊躇させています。


人事担当者のキャリアを考える5つの視点

視点1:「人事の専門領域」を明確にする

人事の業務は幅広いですが、大きく分けると以下の領域があります。

  • 採用・雇用管理(採用戦略、選考設計、雇用契約管理)
  • 人材開発・教育研修(研修設計、OJT支援、キャリア開発支援)
  • 制度設計・運用(評価制度、等級制度、報酬制度の設計と運用)
  • 労務管理(勤怠管理、社会保険、労働法対応、安全衛生)
  • 組織開発(組織文化醸成、エンゲージメント向上、チームビルディング)
  • 人事戦略・経営連携(人員計画、タレントマネジメント、経営への提言)

中小企業では「全部やる」状態が普通ですが、その中でも「自分が最も得意な領域」「最も情熱を持てる領域」を意識することが重要です。すべてを均等にやるのではなく、得意分野を深掘りしながら、他の領域も基本水準を維持する。このバランスが、人事担当者としての専門性を高めます。

札幌のIT企業の人事担当者は、「自分の強みは採用だ」と認識した上で、採用に関する知識を集中的に深めています。外部の採用勉強会に参加し、採用マーケティングの手法を学び、自社の採用プロセスを独自に設計しました。一方、労務管理は社労士に積極的に頼ることで、自分のリソースを採用に集中させています。

視点2:「社外の学びの場」を持つ

社内に人事の先輩がいなくても、社外にはたくさんの学びの場があります。

  • 人事関連の勉強会・セミナー(オンライン参加可能なものも多い)
  • 社労士会や各種士業団体が主催する研修
  • 人事担当者のコミュニティ(異業種の人事同士が情報交換する場)
  • 書籍や専門誌での自己学習
  • 資格取得(社会保険労務士、キャリアコンサルタントなど)

北海道の人事担当者にとって、物理的な距離がネックになることがあります。札幌であれば比較的アクセスしやすいですが、地方都市では対面のセミナーへの参加が難しい場合もある。しかし、オンラインの学びの場は近年大幅に増えています。地理的なハンデは以前より小さくなっています。

旭川の食品メーカーの人事担当者は、月に2回、オンラインの人事コミュニティに参加しています。全国の中小企業の人事担当者と情報交換をする中で、「自分が悩んでいることは、他の会社の人事も悩んでいる」と知ったことが大きかったと話しています。孤独感が薄れ、前向きに仕事に取り組めるようになったとのことです。

視点3:「経営を理解する」力を高める

人事担当者のキャリアを一段高いレベルに引き上げるのは、「経営を理解する力」です。人事の業務を「作業」としてこなすのか、「経営の一機能」として捉えるのかで、仕事の質が大きく変わります。

経営を理解するために具体的にできることを挙げます。

  • 自社の財務諸表を読めるようにする(売上、利益、人件費率の基本的な構造を理解する)
  • 経営計画や事業戦略の内容を把握する(人事にどう影響するかの視点で読む)
  • 業界の動向を継続的にフォローする(競合の採用動向、業界の人材トレンドなど)
  • 経営者との対話を増やす(経営者が何を考え、何に悩んでいるかを知る)

帯広の建設会社の人事担当者は、毎月の経営会議への参加を自ら経営者に提案しました。最初は「人事が経営会議に出る必要があるのか」と言われましたが、「人員計画を事業計画と連動させたい」という趣旨を説明し、了承を得ました。経営会議に出ることで、受注の状況、資金繰りの状態、来期の投資計画——こうした情報が入るようになり、人事施策の精度が格段に上がったとのことです。

視点4:「成果を言語化する」習慣をつける

人事の仕事は成果が見えにくいと述べました。だからこそ、自分の仕事の成果を意識的に言語化する習慣が重要です。

言語化のポイントは以下の通りです。

  • 数値で表現できるものは数値化する(「採用コストを前年比20%削減した」「離職率を12%から8%に改善した」「評価面談の実施率を100%にした」)
  • 定性的な成果も記録する(「評価制度を改定し、社員説明会で理解を得た」「新卒採用を初めて実施し、2名の内定承諾を得た」)
  • 経営への貢献を意識して表現する(「人件費の最適化により、営業利益率の改善に貢献した」)

年に1回、自分の成果を棚卸しする時間を設けることをお勧めします。「今年、自分は何を達成したか」を書き出す。この作業は、自己評価だけでなく、上司への報告やキャリアの方向性を考える際にも役立ちます。

視点5:「次のキャリア」の選択肢を知る

人事担当者のキャリアには、いくつかの方向性があります。

  • 社内でのステップアップ(人事責任者→経営幹部)
  • 人事の専門家としての深化(特定領域のエキスパートになる)
  • 社外への転身(人事コンサルタント、社労士事務所、人材紹介会社など)
  • 独立(社労士として開業、人事コンサルタントとして独立)
  • 経営者への転身(人事の知見を活かして経営に関わる)

どの方向に進むかは人それぞれですが、「選択肢を知っている」ことと「選択肢を知らない」ことでは、日々の仕事への取り組み方が変わります。


企業側ができる支援

人事担当者のキャリア開発は、本人の努力だけに委ねるべきではありません。企業側、特に経営者が支援することが重要です。

支援1:学びの機会を保障する

外部セミナーへの参加費、書籍購入費、資格取得の費用を会社が負担する。これは「投資」です。人事担当者の能力が向上すれば、組織全体の人事機能が向上し、採用の質、定着率、社員の成長——すべてに好影響が出ます。

函館の水産加工会社では、人事担当者に年間10万円の「学習予算」を設けています。セミナー参加費、書籍代、オンライン講座の受講料に使える予算です。社長は「人事担当者が学ばなくなったら、うちの組織は成長が止まる」と話しています。

支援2:社外のネットワーク構築を奨励する

人事担当者が社外の勉強会やコミュニティに参加することを積極的に奨励します。「仕事中に外部の勉強会に参加してよいか」を明確に許可する。業務時間内のセミナー参加を認める。こうした姿勢が、人事担当者の成長意欲を後押しします。

支援3:人事担当者自身の評価とフィードバックを行う

社員の評価は人事が行いますが、人事担当者自身の評価はどうなっているでしょうか。「人事の仕事は評価しにくいから」という理由で、曖昧な評価になっていないでしょうか。

人事担当者にも、明確な目標設定とフィードバックが必要です。経営者が年に2回、人事担当者と「あなたの仕事の成果」「今後の期待」「キャリアの方向性」について対話する場を設けることを推奨します。

支援4:適切なタイミングでの異動・ジョブローテーション

人事一筋で10年、15年となると、視野が固定化するリスクがあります。一時的に営業や企画などの他部門を経験させることで、事業の現場を理解し、より経営に近い視点で人事を考えられるようになります。

逆に、営業や製造の経験者を人事に異動させることも有効です。多様な経験を持つ人材が人事に関わることで、人事機能の質が向上します。


北海道の人事担当者が今日からできること

最後に、北海道で人事を担当する方が、明日からすぐに始められることを挙げます。

1. 自分の「キャリア棚卸し」を行う

人事の業務経験を書き出す。「何年間、何をやってきたか」「何が得意で、何が苦手か」「今後、どの領域を伸ばしたいか」を1枚の紙に整理する。30分あればできる作業です。

2. 月に1冊、人事関連の書籍を読む

人事、経営、組織論、心理学——関連する書籍を月1冊読む習慣をつける。年間12冊の積み重ねは、3年で大きな差になります。

3. 社外の人事担当者と知り合う

同じ地域の他業種の人事担当者と年に数回、情報交換をする場を持つ。オンラインでもよい。「他社はどうしているか」を知ることが、自分の仕事を客観的に見るきっかけになります。

4. 経営者に「自分のキャリアの話」をする

「今後、人事としてこういう方向に成長したい」「そのために、こういう学びの機会がほしい」——こうした話を経営者にすることを躊躇わないでください。経営者にとって、社員が自分のキャリアを考えていることは好ましいことであり、支援を惜しまない方が多い。

人事担当者のキャリアは、その人個人の問題にとどまりません。人事担当者が成長すれば、組織全体の人事機能が成長する。人事機能が成長すれば、社員の採用・育成・定着が改善する。その結果、事業が成長する。人事担当者のキャリア開発は、組織にとっての戦略的投資です。

「支える人」が、自分の成長を後回しにしない。そのために、この記事が少しでもきっかけになれば幸いです。

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