北海道の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法——「今年のスローガン」で終わらせない仕組みの設計
組織開発

北海道の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法——「今年のスローガン」で終わらせない仕組みの設計

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北海道の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法——「今年のスローガン」で終わらせない仕組みの設計

「風通しの良い職場をつくろう——去年、社長がそう宣言して、全社集会で発表したんです。」

帯広の製造業の人事担当者から聞いた話です。社長が「組織風土を変える」と決意し、スローガンを掲げ、社員全員でディスカッションする場を設けた。社員からは「率直に意見が言いやすくなった」「変わるかもしれない」という期待の声が上がった。

しかし、1年後、その人事担当者はこう言いました。「気づいたら元に戻っていました。」

この話は、北海道の企業に限ったことではありません。組織風土改革は、多くの企業が取り組み、多くの企業が「一過性」で終わるテーマです。スローガンを掲げ、イベントを実施し、一時的に盛り上がるが、日常業務に戻ると元の風土に戻ってしまう。

私は、組織風土改革が一過性で終わる最大の原因は、「風土」の定義が曖昧なまま取り組んでいることにあると考えています。「風通しが良い」とは具体的にどういう状態か。「チャレンジする文化」とは具体的にどんな行動が日常的に行われている状態か。この具体化なしに、スローガンだけで風土を変えることはできません。

この記事では、北海道の企業が組織風土改革を「一過性のイベント」ではなく「持続的な変化」にするための方法を解説します。


「組織風土」とは何か——曖昧な概念を具体化する

定義:組織風土とは「日常的に繰り返される行動パターンとその背後にある暗黙の前提」

組織風土は、制度やルールとは異なります。制度は明文化されたものですが、風土は「明文化されていないが、組織の中で当然とされている行動や考え方」です。

例えば、以下のようなものが「組織風土」です。

  • 会議で若手が発言しない(「若い人は黙って聞いていろ」という暗黙のルール)
  • 問題が起きても報告が遅い(「悪い知らせを上げると怒られる」という恐れ)
  • 前例のない提案が出ない(「余計なことはしない方が安全」という空気)
  • 部門間の協力が少ない(「他部門のことに口を出すと嫌がられる」という暗黙の境界線)

これらは、誰かが指示しているわけではありません。しかし、組織の中で繰り返し学習された行動パターンとして定着しています。

風土の3層構造

組織風土は、3つの層で構成されます。

  • 表層:目に見える行動や制度(会議のやり方、コミュニケーションの方法、オフィスの配置)
  • 中層:組織の中で共有されている価値観や信念(「うちの会社では○○が大切」)
  • 深層:無意識の前提や思い込み(「こういうものだ」と疑問すら持たれていないこと)

組織風土改革が一過性で終わるのは、「表層」だけを変えようとするからです。スローガンを掲げる、オフィスのレイアウトを変える、新しい会議体を導入する。これらは表層の変更であり、中層・深層の前提が変わらなければ、元に戻ります。


組織風土改革が「一過性」で終わる5つのパターン

パターン1:「スローガン先行型」

経営者がスローガンを掲げて終わる。「風通しの良い職場」「チャレンジ精神」「全員参加」——美しい言葉は並ぶが、具体的に何をするかが曖昧。スローガンは、行動が伴わなければ、飾りに過ぎません。

パターン2:「イベント消費型」

全社集会、ワークショップ、合宿、社外研修。イベントとしては盛り上がるが、日常に戻ると元通り。イベントは「きっかけ」にはなりますが、「きっかけ」だけでは風土は変わりません。

パターン3:「制度導入型」

「1on1ミーティングを導入すれば風土が変わる」「サンクスカード制度を入れれば感謝の文化が生まれる」——制度を入れれば風土が変わるという発想です。しかし、制度はあくまで「仕組み」であり、その仕組みをどう運用するかが風土を決めます。形だけの1on1は、風土を変えるどころか、社員の時間を奪うだけです。

パターン4:「トップダウン押しつけ型」

経営者が「こういう風土にする」と一方的に決め、社員に押しつける。社員は表面的には従うが、内心では抵抗している。風土は「押しつけ」では変わりません。社員自身が「変わりたい」と思わなければ、持続しません。

パターン5:「成果急ぎ型」

「3か月で風土を変える」「来期までに組織文化を刷新する」——短期間で成果を求めすぎるパターン。風土の変化には年単位の時間がかかります。短期間で成果が出ないと「うまくいかなかった」と判断され、取り組みが打ち切られます。


組織風土改革を「持続的な変化」にするための7つの原則

原則1:「ありたい風土」を具体的な行動レベルで定義する

「風通しの良い職場」ではなく、「会議で全員が少なくとも1回は発言する」「問題が発生したら24時間以内に上司に報告する」「他部門への依頼は直接対話で行い、メールだけで済ませない」——このレベルの具体性で「ありたい風土」を定義します。

具体的な行動レベルで定義することで、「変わったかどうか」が測定可能になります。「風通しが良くなった気がする」ではなく、「会議での発言率が3割から7割に増えた」と言えるようになります。

原則2:経営者自身が「最初に行動を変える」

組織風土改革で最も重要なのは、経営者自身の行動変容です。「率直に意見を言える風土をつくろう」と言いながら、社員の意見を聞かない経営者のもとでは、風土は変わりません。

旭川の食品メーカーの社長は、風土改革の最初のステップとして、「会議で社員が意見を言ったとき、最初に否定しない」というルールを自分に課しました。社員の発言に対して、まず「なるほど、そういう考え方があるか」と受け止める。この小さな行動変容が、会議の雰囲気を変えるきっかけになったと言います。

原則3:「日常の仕組み」に組み込む

イベントや研修ではなく、日常の業務プロセスに風土改革を組み込みます。

具体例は以下の通りです。

  • 毎週の朝礼で「今週のチャレンジ」を共有する時間を設ける
  • 月次の会議の冒頭10分で「他部門への感謝」を発表する
  • 評価面談で「行動評価」の項目に風土改革に関連する行動を組み込む
  • 日報のフォーマットに「今日の改善提案」の欄を追加する

特別なことをするのではなく、既存の仕組みに「小さな変更」を加えることで、風土改革を日常に溶け込ませます。

原則4:「小さな成功体験」を積み重ねる

風土改革は長期戦です。長期戦を戦い続けるためには、途中で「うまくいっている」と実感できる瞬間が必要です。小さな成功体験を意識的に作り、共有します。

「先月の会議で、入社2年目のEさんが初めて改善提案を出した。その提案が採用され、実際に業務が改善された」——こうした具体的な事例を全社に共有することで、「変わりつつある」という実感が広がります。

原則5:「抵抗」を否定せず、対話する

組織風土改革には必ず「抵抗」が伴います。「今のままで問題ない」「余計な仕事が増える」「そんなことより目の前の業務を優先したい」——こうした声は、否定すべきものではありません。

抵抗の背後には、「変わることへの不安」「自分のやり方を否定されたくない」「本当に良くなるのか疑わしい」といった感情があります。これらの感情に寄り添い、対話することが重要です。

札幌のIT企業では、風土改革に対して最も抵抗感が強かったのはベテラン社員でした。しかし、人事担当者がベテラン社員一人ひとりと面談し、「あなたの経験と知恵が、この改革には必要です」と伝えたところ、協力的に変わった社員が多かったと言います。抵抗の原因は「無視されている」という感覚だったのです。

原則6:「測定」して進捗を可視化する

風土改革の進捗を、定期的に測定します。測定方法は以下の通りです。

  • 社員アンケート(半年に1回):「会議で意見が言いやすいか」「上司に悪い報告をしやすいか」「部門間の協力は十分か」などの質問項目に5段階で回答
  • 行動指標の測定:「会議での発言者数」「改善提案の件数」「社内の情報共有回数」などを定量的に測定
  • エンゲージメント調査:総合的な社員のエンゲージメントスコアの変化を追跡

測定結果を全社に公開し、「前回から改善した点」と「まだ課題が残っている点」を共有します。これにより、風土改革が「感覚」ではなく「事実」に基づいた取り組みになります。

原則7:「3年計画」で取り組む

組織風土は、長い時間をかけて形成されたものです。それを変えるにも、時間がかかります。最低でも3年の計画を立て、段階的に取り組みます。

  • 1年目:現状の風土を可視化し、「変えたい行動」を特定する。経営者自身の行動変容から始める
  • 2年目:日常の仕組みに風土改革を組み込み、小さな成功体験を積み重ねる
  • 3年目:新しい行動パターンが「当たり前」になりつつあるか検証し、定着を図る

北海道の企業における組織風土改革の特有の課題

課題1:「黙って耐える」文化

北海道の企業、特に第一次産業や建設業では、「黙って働く」「弱音を吐かない」「自分の仕事を黙々とやる」という文化が強い場合があります。この文化は、厳しい自然環境の中で仕事をしてきた歴史と無関係ではありません。

この文化そのものを否定する必要はありません。しかし、「問題があっても言わない」「困っていても助けを求めない」という行動パターンが、安全上のリスクや組織の問題の潜在化につながっている場合は、改善が必要です。

課題2:拠点間の風土の違い

札幌本社と地方拠点では、風土が異なることが珍しくありません。本社ではコミュニケーションが活発でも、地方の営業所では「人数が少なく、情報が共有されない」という状態になっていることがあります。

風土改革は全社的に取り組む必要がありますが、拠点ごとの状況の違いを認識し、拠点の実態に合わせたアプローチが必要です。

課題3:世代間のギャップ

長年勤めてきたベテラン社員と、近年入社した若手社員の間で、「当たり前」の感覚が異なることがあります。ベテラン社員にとっての「普通」が、若手社員にとっては「不合理」に見える。この世代間ギャップを「どちらが正しいか」ではなく「どう折り合いをつけるか」として対話する場が必要です。


風土改革を推進する「チーム」の設計

風土改革は、人事だけで進められるものではありません。全社的な取り組みとして、推進チームを設計します。

推進チームの構成

  • 経営者(最高責任者として関与する)
  • 人事担当者(事務局として運営を担う)
  • 各部門の代表者(現場の声を反映する)
  • 若手社員(新しい視点を持ち込む)

推進チームの人数は5~8名程度が適切です。月に1回の定例ミーティングで、風土改革の進捗確認、課題の共有、次のアクションの決定を行います。

推進チームの役割

  • 風土改革のビジョンと具体的な行動目標の策定
  • 施策の企画・実行
  • 現場からのフィードバックの収集
  • 測定結果の分析と改善策の検討
  • 経営者への報告と提言

風土改革の「成果」を事業成果につなげる

組織風土改革は、それ自体が目的ではありません。風土が変わることで、事業成果が向上することが目標です。

「心理的安全性が高まった」→「問題の早期発見・早期対応ができるようになった」→「クレーム対応コストが削減された」

「部門間の連携が強化された」→「営業と製造の情報共有がスムーズになった」→「納期遅延が減少した」

「チャレンジする文化が醸成された」→「改善提案が増えた」→「業務効率が向上し、残業時間が削減された」

このように、風土の変化と事業成果の因果関係を意識し、経営者に報告することで、風土改革への投資の継続が得られます。

組織風土改革を一過性にしないために最も重要なのは、「風土を変えること」を目的にしないことです。「事業成果を出すために、組織の中でどんな行動が日常的に行われる必要があるか」を問い、その行動を促進する仕組みを日常に組み込む。この地道な積み重ねが、やがて「風土」として定着します。北海道の企業が風土改革に取り組むなら、まず経営者自身が「自分の行動を一つ変える」ことから始めてみてください。それが、組織全体の変化の起点になると私は考えています。

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